一つの河口、二つの岸:規則ではなく略称
ボルドーワインの話では、産地を二つに分けて語ることが多い。左岸はガロンヌ川とジロンド河口の西側にあるメドックとグラーヴ、右岸はドルドーニュ川沿いのサン・テミリオンやポムロールを中心とするリブルネを指す。この略称は、左岸を砂利とカベルネ・ソーヴィニヨンに、右岸を粘土・石灰岩とメルロに結びつける。
ただし、これは傾向であって規則ではない。ポイヤック、サン・テミリオン、ポムロールの原産地呼称の規定は、いずれもカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロの両方を認めている。違いは禁止から生まれるのではなく、土壌の違いに応じた生産者の選択から生まれる。本稿ではこれらの土壌を整理し、品種のふるまいにも触れる。
AI
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砂利と粘土を並べて
画像:Maison Apéro(生成画像) · Maison Apéro original
左岸:河口沿いの砂利の丘(クループ)
ポイヤック村の地質は、ジロンド河口と平行に並ぶ砂利の段丘である。標高は3〜30メートル。第四紀のこの段丘は平均で厚さ約10メートルあり、始新世と漸新世のより古い泥灰岩と石灰岩をほぼ完全に覆っている。
段丘は刻まれて丸みのある丘、クループになっている。クループの向き、河口への近さ、土壌の水はけのよさが、非常に質の高いブドウ栽培を支えている。クループでは多少とも砂を含む砂利の土壌が主体である。
ジロンド河口のそばに並ぶ砂利のクループと、その断面です。第四紀の砂利が、より古い泥灰岩と石灰岩を覆っています。縮尺はなく、高さと厚さは誇張しています。形と色は説明のための表現です。
図の内容を文章・表で読む
- クループ:標高3〜30 m — 河口と平行に並ぶ砂利の段丘が刻まれてできた丸い丘
- ジロンド河口 — 河口への近さはクループの長所の一つ
- 第四紀の砂利:厚さ約10 m — 段丘の平均の厚さ。水はけがよく、クループでは多少砂を含む
- より古い泥灰岩と石灰岩 — 始新世と漸新世の地層。砂利がほぼ完全に覆う
比較の観点
三つの産地の比較は土壌と地形にもとづく。
右岸:サン・テミリオンの石灰岩台地と斜面
サン・テミリオンの畑の中央には、第三紀のカルケール・ア・アステリ(ヒトデ石灰岩)の台地が残っている。台地の上にはいくつもの種類の土壌がある。
この岩石は、漸新世の一階であるスタンプ期の海進の際に堆積したものだ(フランス地質調査所 BRGM のリブルヌ図幅解説書)。泥灰岩や粘板岩ではなく、石灰岩である。
台地の周りの斜面には漸新世のモラス・デュ・フロンサデが露出し、斜面は一般に北側より南側と西側のほうが急である。この地層の上には主に石灰質の土壌があり、その土性はしばしば粘土質シルトである。つまりサン・テミリオンで言う「粘土」は一様な粘土層ではなく、こうした斜面の土壌の土性を指す。
ポムロール:上に砂利、下に粘土、下層土に鉄
ポムロールの土壌には、組み合わさって働く三つの層がある。地表には多少締まった、あるいは砂質の砂利があり、水はけがよく、葉に光を照り返す。その下には第三紀の粘土の基盤があり、ブドウをゆっくり成熟させ、樹への水の供給をよく調える冷涼な層になっている。
下層土には酸化鉄も含まれ、地元ではクラス・ド・フェールと呼ばれる。これは特有のミネラル要素をもたらすもので、粘土の基盤とは別の特徴であり、その別名ではない。
ポムロールでは土壌が成熟の速さと樹への水の供給に直接結びついているので、下の模式図ではポムロールを例にとる。
ポムロールの土に立つブドウの樹と、その下の断面です。縮尺はなく、実際の深さや厚さ、下層土のどこに酸化鉄があるかは示していません。形と色は説明のための表現です。
図の内容を文章・表で読む
- 葉 — 地表の砂利が照り返す光を受ける
- 果実 — 冷涼な粘土の層のおかげでゆっくり熟す
- 地表の砂利 — 多少締まった、または砂質。水はけがよい
- 第三紀の粘土 — 冷涼な層。樹への水の供給をよく調える
- クラス・ド・フェール — 下層土の酸化鉄。粘土とは別のもの
標高と斜面
ポイヤックのクループは低く、砂利の段丘は標高3〜30メートルにある。クループの向きもその長所の一つである。
サン・テミリオンでは、台地を囲む斜面が一般に北側より南側と西側で急である。ただし、サン・テミリオンとポムロールの標高、およびポムロールの向きは、ここでは示しておらず、推定もしない。
三つの産地の表土、その下にあるもの、地形、強調される点を比べます。
図の内容を文章・表で読む
| ポイヤック(左岸) | サン・テミリオン(右岸) | ポムロール(右岸) | |
|---|---|---|---|
| 表土 | クループ上の、多少砂を含む砂利 | 台地上は多様な土壌、斜面は石灰質でしばしば粘土質シルト | 締まった、または砂質の砂利。水はけがよく光を照り返す |
| その下にあるもの | 始新世・漸新世の泥灰岩と石灰岩を覆う、厚さ約10mの第四紀の段丘 | ヒトデ石灰岩の台地(漸新世)、斜面には漸新世のモラス | 第三紀の粘土の基盤、下層土に酸化鉄(クラス・ド・フェール) |
| 地形 | クループ:標高3〜30m | 斜面は北側より南側と西側が急 | 標高は示さない |
| 強調される点 | 向き、河口への近さ、水はけ | モラスの斜面に囲まれた石灰岩台地 | 冷涼な粘土の層:ゆっくりした成熟、調えられた水の供給 |
なぜ砂利にカベルネ・ソーヴィニヨン、粘土にメルロなのか
カベルネ・ソーヴィニヨンはメルロより晩熟でブレンドに骨格を与える品種、メルロは早熟でしなやかな果実味をもつ品種である(ボルドーワイン委員会 CIVB)。
土壌の記述と合わせて読むと、よくある説明が導かれる。水はけのよい砂利は晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンに合い、成熟を遅らせ水分を調える冷涼な粘土の層はメルロに合う、というものだ。これは傾向として扱いたい。両品種とも三つの産地すべてで認められており、これらのワインの多くはブレンドで、収穫年や醸造も結果を左右する。
グラスの中でも同じ注意が要る。左岸はしっかりした骨格、右岸は丸い果実味という対比は、目の前のワインで確かめる仮説であって法則ではない。ブレンドでは、香りの一つひとつやタンニンのすべてを、一つの品種や一つの土壌に帰することはできない。
演習:設問一つ、模範解答、自己採点
設問:ポムロールの原産地呼称の規定を使い、土壌の三つの層がそれぞれブドウの樹と果実の成熟にどう影響しうるか説明しなさい。
模範解答:地表の砂利は締まったものも砂質のものもあり、水はけがよく、葉に光を照り返す。その下の第三紀の粘土の基盤は冷涼な層をなし、成熟を遅らせ、樹への水の供給をよく調える。下層土には酸化鉄(クラス・ド・フェール)も含まれ、特有のミネラル要素をもたらす。これらの特徴が気候と合わさって、ポムロールのワインの個性の基盤になる。
自己採点(Maison独自の目安で、公式試験の採点基準ではない):三つの層をそれぞれ効果とともに正しく説明できれば各1点(計3点)、クラス・ド・フェールを粘土と区別できれば1点。
岩と土壌
- ポイヤック:始新世・漸新世の泥灰岩と石灰岩を覆う第四紀の砂利段丘
- 右岸:サン・テミリオンはヒトデ石灰岩とモラス、ポムロールは粘土の上の砂利
水と成熟
- 砂利のクループは水はけがよい
- ポムロールの粘土は冷涼な層:成熟が遅く、水の供給が調う
品種
- 晩熟のカベルネ・ソーヴィニヨンは砂利と結びつく
- 早熟のメルロは粘土と結びつく
よくある質問
なぜカベルネ・ソーヴィニヨンは左岸と結びつけられるのですか?
カベルネ・ソーヴィニヨンはメルロより晩熟の品種で、ポイヤックの砂利のクループは水はけがよい土地です。水はけのよい砂利は晩熟の品種と組み合わされることが多いものの、メルロも認められており、これらのワインの多くはブレンドです。
クラス・ド・フェールとは何ですか?
ポムロールの下層土に含まれる酸化鉄の地元での呼び名で、特有のミネラル要素をもたらします。ポムロールの地表の砂利の下にある第三紀の粘土の基盤とは別のものです。
ポイヤックの砂利の丘はどのくらいの高さですか?
砂利の段丘はジロンド河口と平行に標高3〜30メートルに並びます。第四紀のこの段丘の厚さは平均約10メートルです。
サン・テミリオンの台地は粘土でできているのですか?
いいえ。台地の岩石はカルケール・ア・アステリという石灰岩で、漸新世のものです(BRGM)。台地の上にはいくつもの種類の土壌があります。周りの斜面では、しばしば粘土質シルトの土性をもつ石灰質土壌がモラスを覆っています。
