なぜ一つの気候に複数の数が要るのか
ケッペン=ガイガーの区分(Peel ほか、2007)は、一年を通した月ごとの気温と降水量で世界を分けます。地中海性・海洋性・温暖湿潤といった型は分かり、ワインの三大気候の記事もここから始まります。ただしブドウがどれだけ早く熟すかは分からないため、栽培では一つの生育期のために作られた指数も使います。
指数はどれも、同じ日別の気温記録を違う形に縮めます。Hall と Jones(2010)はオーストラリアの地理的表示について四つの指数を計算し、使う指数によって同じ産地が別の区分になりうることを示しました。以下、主な尺度を順に見ます。
ウィンクラー指数:10 °C を超えた分の積算
ウィンクラー尺度は、1944年にカリフォルニア大学デイヴィス校の Amerine と Winkler が、カリフォルニアを暑さで分けるために発表しました。積算温度は、北半球では 4月1日から10月31日まで、日平均気温が 10 °C(50 °F)を超えた分を足したものです。10 °C 以下の日は何も加わりません。
五つの地域は華氏の積算温度で定義されます。地域Iは 2500 まで、IIは 2501–3000、IIIは 3001–3500、IVは 3501–4000、Vは 4000 超です。Hall と Jones は同じ境界を摂氏で 1389、1667、1944、2222 と示しています。
この尺度の強みは単純さで、日平均だけあれば足ります。それは限界でもあります。昼と夜を平均するため、暑い午後と冷える夜の組み合わせが、穏やかな昼と穏やかな夜と同じ点数になりえます。降水量や日の長さも考慮しません。
ヒューグリン指数:午後の暑さと日の長さ
ヒューグリンの太陽熱指数は 1978年に Huglin が提案し、のちに OIV の決議(2012年)で定義されました。北半球では 4月1日から9月30日まで(南半球は10月1日から3月31日まで)、日平均気温と日最高気温をそれぞれ 10 °C を超えた分で取り、その平均を足し合わせ、緯度係数 k を掛けます。k は 40–42 度で 1.02、42.1–44 度で 1.03、44.1–46 度で 1.04、46.1–48 度で 1.05、48.1–50 度で 1.06 です。決議は 40–50 度の外の係数を定めていません。
日最高気温を使うため、日差しが強く午後が暑い土地ではウィンクラーより速く上がります。Tonietto と Carbonneau(2004)は、非常に冷涼(1500 まで)、冷涼(1500–1800)、温和(1800–2100)、やや温暖(2100–2400)、温暖(2400–3000)、非常に温暖(3000 超)に分けています。ドイツ気象局 DWD は、リースリングとピノ・ノワールに 1700 から 1800 を挙げています。夜の気温と降水量は、この指数には出てきません。
生育期平均気温と六つの産地
生育期平均気温(GST)は、北半球では 4月から10月まで(南半球は10月から4月まで)の平均気温です。Jones はこれを冷涼(13–15 °C)、中間(15–17 °C)、温暖(17–19 °C)、高温(19–24 °C)に分け、質の高いワインの範囲を約 13–21 °C としています。
Jones の表の値で幅を見ましょう。モーゼル 13.0 °C、アルザス 13.1、シャンパーニュ 14.5、ブルゴーニュ(コート)15.3、マーガレット・リヴァー 18.6、バロッサ 19.9 °C です。値は平均する年によって変わるので、新しいデータと比べる前に表の基準期間を確かめる必要があります。季節平均は読みやすい反面、暑さのピークや冷える夜を隠します。
出典のあるデータから描いた図
Jones の表の値です。新しいデータと比べる前に、表の平均期間を確かめてください。Jones の区分:冷涼 13–15、中間 15–17、温暖 17–19、高温 19–24 °C。
- Jones は、質の高いワインの範囲を約 13–21 °C としています。
生育期平均気温(°C)
- モーゼル: 13 °C
- アルザス: 13.1 °C
- シャンパーニュ: 14.5 °C
- ブルゴーニュ(コート): 15.3 °C
- マーガレット・リヴァー: 18.6 °C
- バロッサ: 19.9 °C
涼しい夜・水・複合気候区分
Tonietto と Carbonneau(2004)は、暑さだけでは足りないとして、三つの指数を組み合わせた複合気候区分(MCC)を提案しました。ヒューグリン指数、冷涼夜間指数(CI)、乾燥指数(DI)です。29か国の97産地に適用しています。
CI は 9月(南半球は3月)の日最低気温の平均です。区分は、非常に冷涼な夜が 12 °C まで、冷涼な夜が 12 超 14 °C まで、温和な夜が 14 超 18 °C まで、温暖な夜が 18 °C 超です。DI は Riou による潜在的な土壌水収支で、非常に乾燥から湿潤までに分かれます。
日較差(日最高気温から最低気温を引いたもの)は、この体系では独立した指数ではなく、夜の側を CI がとらえます。著者らは、涼しい夜を赤品種の色と香りに結びつけています。
出典のあるデータから描いた図
各尺度が何を数え、どう区分し、何を見落とすか。見落としは定義から読み取った私たちの整理であり、出典の数値ではありません。
| 何をはかるか | 区分 | 見落とし | |
|---|---|---|---|
| ウィンクラー | 日平均気温の 10 °C 超の分、4月1日から10月31日 | 地域I–V:Iは 2500 まで、Vは 4000 超(華氏の積算温度) | 昼と夜を平均し、降水量・日の長さは考慮しない |
| ヒューグリン | 日平均と日最高の平均(10 °C 超の分)、4月1日から9月30日 | 非常に冷涼は 1500 まで、非常に温暖は 3000 超 | 夜の気温と降水量は出てこない |
| 季節平均(GST) | 4月から10月の平均気温 | 冷涼 13–15 °C、中間 15–17、温暖 17–19、高温 19–24 | 暑さのピークや冷える夜を隠す |
| 冷涼夜間指数(CI) | 9月の日最低気温の平均 | 非常に冷涼な夜は 12 °C まで、温暖な夜は 18 °C 超 | 一か月・一変数だけ。暑さも水も見ない |
| 乾燥指数(DI) | 生育期の潜在的な土壌水収支 | 非常に乾燥から湿潤まで | 水だけを見る。土壌データに左右される |
| ケッペン=ガイガー | 一年を通した月ごとの気温と降水量 | Csb、Cfb、Cfa などの記号 | ブドウの成熟の速さを言うには粗すぎる |
出典
- Amerine & Winkler(1944年)— カリフォルニア産ブドウの果汁とワインの組成と品質、Hilgardia 15(6)、493–675
- Hall & Jones(2010年)— オーストラリアのワイン用ブドウ産地における気候の空間解析、Australian Journal of Grape and Wine Research 16(3)、389–404
- OIV — 決議 OIV-VITI 423-2012:ヒューグリンの太陽熱指数
- Tonietto & Carbonneau(2004年)— 世界のブドウ産地のための複合気候区分体系、Agricultural and Forest Meteorology 124、81–97
- Jones — 気候とテロワール:気候の変動と変化がワインに与える影響(Geoscience Canada Reprint Series 9、2006年)
- Peel、Finlayson、McMahon(2007年)— ケッペン=ガイガー気候区分の更新版世界地図、Hydrology and Earth System Sciences 11、1633–1644
数が見落とすものと、生産者の使い方
地域の数値は、地域の中の場所の違いを隠します。ボルドーの気温による区分け(Bois ほか、2018)では、同じ熟度に達する日が場所によって最大 20 日違いました。DWD は、南・南西・南東向きの斜面は平らな土地より約 1.5–2 K 暖かく、4月から9月までに 150 から 300 の積算温度が加わると述べています。上の尺度はどれも、土壌、風、霜の危険、樹の管理を含みません。
生産者は指数を最初のふるいとして使います。畑に合う品種を考える(Jones はピノ・ノワールに約 14.0–16.0 °C、カベルネ・ソーヴィニヨンに 16.5–19.5 °C を挙げています)、年ごとを比べる、温暖化を追う(Jones ほか、2005 は、27の優良産地で50年間に約 1.3 °C の上昇を示しました)といった使い方です。数は判断の入口になりますが、結論の前には畑を歩く必要があります。
出典のあるデータから描いた図
描いた産地:日の当たる斜面は谷底より太陽に温められます。大きさは説明用で、数字はドイツ気象局とボルドーの研究によるものです。
- 日中の暑さ — ヒューグリンは日最高気温も加え、ウィンクラーは日平均だけ
- 日の当たる斜面 — ドイツでは約 1.5–2 K 暖かく、積算温度が 150–300 多い
- 一つの産地の中の場所 — ボルドーでは熟度に達する日が最大 20 日違う
演習1:二つの気候を見分ける
【設問】
二つの産地のウィンクラー積算温度が同じです。一方は午後が暑く夜が冷え、もう一方は昼が穏やかで夜が暖かい産地です。ウィンクラー、ヒューグリン、冷涼夜間指数のうち、二つを見分けられるのはどれか、理由とともに答えなさい。
【模範解答】
ウィンクラーは日平均だけを使うので、二つは同じ点数になりえます。ヒューグリンは日最高気温を加えるため、午後が暑い産地のほうが高くなります。冷涼夜間指数は 9月の最低気温を使うので、冷える夜と暖かい夜を分けられます。
【採点基準(6点)】
・ウィンクラーが日平均だけを使うと述べている(2点)
・ヒューグリンが日最高気温を加えると説明している(2点)
・冷涼夜間指数が夜の気温を見ると説明している(2点)
演習2:産地の中の斜面
【設問】
ヒューグリン値が約 1700 の産地で、南向きの斜面に畑があります。この畑自身の値が産地の値より高くなりうるのはなぜですか。また、DWD はドイツの斜面についてどんな値を挙げていますか。
【模範解答】
産地の値は平均であり、産地の中でも場所は違います。ボルドーでは熟度に達する日が最大 20 日違います。DWD は、南・南西・南東向きの斜面に、平地より約 1.5–2 K、4月から9月までで 150 から 300 の積算温度の上乗せを挙げており、斜面は産地の値を上回りえます。
【採点基準(6点)】
・産地の値は場所の違いを隠す平均だと説明している(2点)
・DWD の値 1.5–2 K と 150–300 の積算温度を挙げている(2点)
・斜面が産地の値を上回りうると結論づけている(2点)
データ
- 日ごとの気温記録
- 季節の期間
- 計算式
指数
- ウィンクラー:日平均
- ヒューグリン:平均と最高
- 季節平均・夜・水
使い方
- 公表された尺度で区分する
- 品種の範囲と比べる
- 畑と年を確かめる
よくある質問
ウィンクラー指数とは何ですか。
4月1日から10月31日まで、日平均気温が 10 °C(50 °F)を超えた分を足したもので、1944年にカリフォルニア大学デイヴィス校の Amerine と Winkler が発表しました。華氏の積算温度で 2500 までから 4000 超まで、地域IからVに分けます。
ヒューグリン指数はウィンクラーとどう違いますか。
ヒューグリンは 4月1日から9月30日まで、日平均と日最高気温(ともに 10 °C 超の分)の平均を取り、緯度係数を掛けます。午後が暑い土地ではそのぶん速く上がります。
一つの数でワイン産地の気候を表せますか。
表せません。指数ごとに数えるものが違い、産地の中の場所も違います。ボルドーでは熟度に達する日が最大 20 日違います。指数は最初のふるいであり、結論ではありません。
情報源
- Amerine & Winkler(1944年)— カリフォルニア産ブドウの果汁とワインの組成と品質、Hilgardia 15(6)、493–675
- OIV — 決議 OIV-VITI 423-2012:ヒューグリンの太陽熱指数
- Tonietto & Carbonneau(2004年)— 世界のブドウ産地のための複合気候区分体系、Agricultural and Forest Meteorology 124、81–97
- Jones、White、Cooper、Storchmann(2005年)— 気候変動と世界のワイン品質、Climatic Change 73、319–343
- Jones — 気候とテロワール:気候の変動と変化がワインに与える影響(Geoscience Canada Reprint Series 9、2006年)
- Hall & Jones(2010年)— オーストラリアのワイン用ブドウ産地における気候の空間解析、Australian Journal of Grape and Wine Research 16(3)、389–404
- ドイツ気象局(DWD)— ヒューグリン指数(ドイツ気候アトラスの解説)
- Bois ほか(2018年)— 気温によるボルドーワイン産地の区分け、OENO One 52(4)、291–306
- Peel、Finlayson、McMahon(2007年)— ケッペン=ガイガー気候区分の更新版世界地図、Hydrology and Earth System Sciences 11、1633–1644
