三つの性質、三つの働き方
標高、斜面、向きはどれも畑の土地の性質ですが、働き方が違います。標高は空気を変えます。気温と、ブドウに届く紫外線の量です。斜面は、水と冷気が下へどう動くか、そして畑仕事がどれだけ難しいかを決めます。向き(アスペクト)は、協同普及サービスの情報サイトeXtensionが「斜面が向いている方角」と定義するもので、土地が受ける日照を決めます。
この記事はこの順に見ていき、最後に、これらの規則をどこまで信じてよいかを考えます。どれも一定の方向を指す傾向にすぎず、ワインの味を決めるものではありません。ここで引く資料が測っているのは気温・光・費用であり、味ではありません。
標高と気温:100mで約0.65℃
ICAOの標準大気では、海面から11kmまで、気温は1kmにつき6.5℃、つまり100mあたり約0.65℃下がります。NASAグレン研究センターは同じ層を、T = 15.04 − 0.00649 h(Tは℃、hはm)という直線で示しています。
この数字は平均であり、航空機のために取り決めた約束事です。特定のブドウ畑に当てはまる法則ではありません。米国国立気象局は気温減率を「高さとともに気温が下がる割合」と定義しています。上昇する乾いた空気塊はもっと速く、1kmにつき9.8℃冷えます。谷の実際の空気は、天気・季節・時刻で変わります。
目安としては、300m高い場所は平均で約2℃涼しい計算です(0.65×3。当サイトの計算)。桁を知る程度にとどめ、地元の気温記録で確かめてください。
標高と光:紫外線と寒暖差
高い場所では、ブドウの上にある大気が薄く、紫外線(UV)を吸収する量が減ります。世界保健機関(WHO)は、標高1,000mごとに約10%増えるとしています。
Berliらの研究(2011年)は、標高1,450mのブドウ畑のマルベックを調べ、太陽のUV-Bが果皮のフェノール類を増やすことを示しました。測ったのは果実でワインではないため、裏づけられるのは仕組みであって味ではありません。この研究の背景は、メンドーサのアンデスの雨陰の記事で扱っています。
高い場所では昼夜の温度差が大きくなると考えられがちです。空気が薄いと、日没後に地面から熱が逃げやすい傾向があるためです。ただし傾向であり、メンドーサやサルタについて標高別の一次の測定値はこの記事では見つからなかったため、数字は示しません。
斜面:水と冷気は下へ流れる
晴れて風のない夜、地面は放射で熱を失い、接した空気が冷えます。冷たい空気は密度が高いので斜面を下り、斜面のふもとや窪地にたまる、とペンシルベニア州立大学エクステンションは説明しています。こうしてできる霜を放射霜といい、最も低い土地が最も被害を受けます。冷気が流れ続けられれば、斜面の中腹は暖かいままで、この帯を斜面温暖帯(サーマルベルト)と呼ぶことがあります。斜面を横切る並木・土手・壁は冷気をせき止め、その手前に冷気がたまります。斜面は余分な雨水の排水にも役立ちます。
eXtensionによれば、ゆるやかから中程度の斜面は冷気の排出を速め、何もさえぎるものがなければ、急なほど流れは速くなります。
したがって、斜面のどこに樹があるかは、斜面の傾きと同じくらい重要になりえます。メンドーサのグアルタジャリーにあるモナステリオ畑(標高1,430〜1,550m)の研究では、低い区画は夜間の冷気だまりと霜が起きやすいことがわかりました。
出典のあるデータから描いた図
丘を横から見た模式図です。日を受ける側には光がより正面から当たります。晴れて風のない夜、冷気は斜面を下ってふもとにたまり、中腹は暖かいままのことがあります。形は説明のための表現で、縮尺は正確ではありません。
- 日差し — 日に向いた斜面には、より正面から当たる
- 冷気が流れ下る — 晴れて風のない夜、重い冷気は斜面を下る
- 向き — 日を受ける側は北半球では南、南半球では北
- 冷気がたまる — 最も低い土地が霜に最もさらされる
- 斜面の中腹 — 冷気がせき止められなければ、暖かいままのことがある
急斜面:得るものと払う代償
急斜面は排水と日照に役立ちますが、栽培に費用がかかります。ドイツ語の用法では、急斜面(Steillage)は勾配が30%を超える畑です。モーゼルの地域振興団体Weinland Moselは、2024年末時点で畑8,440haのうち約3,000haが急斜面だとしています。他の資料は違う割合を挙げているため、これは一つの出典の数字です。最もよく知られた極端な例がブレマー・カルモントで、RLPツーリズムは勾配を最大65度とし、他の資料は68度とします。
こうした斜面では機械はほとんど入れず、手作業が中心です。StrubとLoose(2021年、OENO One)は、ドイツの5つの生産者の3年分、2,321件の作業時間の記録を分析し、手作業による急斜面の管理は、平地の標準的なブドウ栽培の2.6倍の費用がかかると報告しました。急斜面の生産者がその費用をまかなう難しさも述べています。
資料によって斜面の単位が違うので、下の表は出典の表記のまま並べています。プリオラートの仕様書はパーセントで、多くの畑で勾配は15%超、一部は60%に達するとしています。勾配60%は水平100mで60m上がる傾きで、約31度です。モーゼルの基準30%は約17度です(当サイトの計算)。カルモントの65度は、そのどちらよりも急です。プリオラートの段々畑は、プリオラートの景観の記事で扱っています。
出典のあるデータから描いた図
勾配は、それぞれ出典の単位のまま示しています。パーセントの勾配を度に直した値は当サイトの計算(パーセントの逆正接)で、勾配60%は水平100mで60m上がる傾きです。
| 出典の表記 | 度に直すと | |
|---|---|---|
| モーゼル:急斜面(Steillage) | 30%超 | 約17度 |
| プリオラート:最も急な畑 | 最大60% | 約31度 |
| ブレマー・カルモント(モーゼル) | 最大65度(他の資料は68度) | 65度(出典のまま) |
向き:斜面はどちらを向いているか
eXtensionは、向き(アスペクト)を斜面が向く方角と定義しています。北半球では南向きの斜面が最も日を受け、南半球では北向きの斜面がそうです。東向きの斜面は朝日を受けます。暑い気候では、涼しい向きが成熟を適度に遅らせることがあり、最も日当たりのよい斜面が常に目標とは限りません。
ブルゴーニュのコート・ドールは、冷涼な気候で日照を求めた典型例です。ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)は、この畑を標高約200〜450mの斜面の連なりとし、その多くが昇る太陽に向かって南東に面していると述べています。斜面は凸型で、中腹までは急で、その下はゆるやかです。
南半球では日を受ける側は北ですが、一つの畑の結果が規則どおりとは限りません。メンドーサのモナステリオでは、東・北東・南東向きの斜面が、他の向きより多くの熱を積算していました。方角の規則は出発点で、決めるのは現地の測定です。
数字の位置づけと、規則をどこまで信じるか
ブドウ畑の高さは地域によって大きく違います。下の図は、出典のある四つの標高の範囲を、出典のとおりメートルで並べたものです。プリオラートは約100〜750m(DOQの仕様書)、コート・ドールは約200〜450m(BIVB)、アルト・アディジェは200〜1,000m(南チロルワイン協会)、メンドーサのグアルタジャリーにあるモナステリオ畑は1,430〜1,550m(大学の研究。産地ではなく一つの畑)です。棒が示すのはブドウの育つ高さであり、その土地の涼しさや良し悪しではありません。アルト・アディジェの500mとプリオラートの500mは、緯度・海からの距離・周囲の山が違うため、気候が違います。
モナステリオの研究は、慎重さを求める最も強い根拠です。斜面・向き・標高が合わさって、一つの畑の中に強い微気候の差が生まれることがわかりました。東・北東・南東向きの斜面は多くの熱を積算し、低い区画は夜間に冷気がたまり霜が降り、生育期の平均最高気温と平均最低気温は畑の中で最大3.5℃と2.5℃違いました。この畑の高低差はわずか120mで、平均の気温減率なら1℃未満にしかなりません(当サイトの計算)。標高だけでは、この差を説明できません。
これがこの記事の規則です。気温減率、斜面温暖帯、日向きの斜面は傾向です。何を確かめるべきかは教えてくれますが、何が見つかるかまでは教えてくれません。
出典のあるデータから描いた図
出典のある標高の範囲を、それぞれ出典のとおりに示しています。プリオラートの仕様書、ブルゴーニュワイン委員会(コート・ドール)、南チロルワイン協会、メンドーサの一つの畑を調べた大学の研究(強調表示。産地ではなく一つの畑)です。棒が示すのはブドウの育つ高さで、その土地の涼しさや良し悪しではありません。
ブドウ畑の標高(m)
- プリオラート: 100〜750 m
- コート・ドール: 200〜450 m
- アルト・アディジェ: 200〜1,000 m
- メンドーサの一つの畑: 1,430〜1,550 m
練習問題:一つの丘の二つの区画
【設問】
北半球の栽培者が、新しい畑の候補として二つの区画を持っています。どちらも南向きで、一つは斜面のふもとの窪地、もう一つは中腹です。この記事の資料に基づき、標高・斜面・向きがそれぞれ何を示すかを述べ、それでも現地で確かめる必要がある理由を説明しなさい。
【模範解答】
どちらの区画も南向きで、北半球では日を受ける向きなので、選択は斜面と高さで決まります。晴れて風のない夜は冷気が斜面を下ってふもとにたまるため、窪地は放射霜を受けやすく、中腹は、並木や土手が流れをせき止めなければ暖かいままでいられます。高い区画は平均でも、100mあたり約0.65℃涼しくなります。ただしこれらは平均と傾向です。モナステリオの研究では一つの畑の中で最大3.5℃の差が見つかったので、栽培者は両方の区画で気温を測り、障害物を探し、斜面で作業する費用も比べてから決めるべきです。
【セルフチェック】
・向きは同じなので、斜面と高さが決め手になると述べている
・冷気の流下、ふもとへのたまり、中腹の暖かい帯、障害物の影響を説明している
・平均の気温減率を示し、それを平均だと断っている
・限界として、モナステリオで測られた局所的な差と、現地で確かめる必要を挙げている
標高
- 空気が薄い:平均で100mごとに約0.65℃涼しい
- 紫外線が増える:1,000mごとに約10%
- 昼夜の温度差が大きいと考えられるが、数字は示さない
斜面
- 晴れて風のない夜、冷気は斜面を下る
- ふもとにたまり、中腹は暖かいことがある
- 急斜面は手間がかかる:ある研究では2.6倍の費用
向き
- 日を受ける側:北半球は南、南半球は北
- 東向きの斜面は朝日を受ける
- 暑い土地では涼しい向きが好まれることもある
よくある質問
標高が100m上がると、気温はどれくらい下がりますか。
ICAOの標準大気では、気温は1kmにつき6.5℃、100mあたり約0.65℃下がります。これは大気の平均で、実際のブドウ畑は天気・時刻・土地の形で変わります。
霜に対して、斜面の中腹がふもとより安全なことが多いのはなぜですか。
ペンシルベニア州立大学エクステンションによれば、晴れて風のない夜、冷たく重い空気は斜面を下り、ふもとや窪地にたまります。流れをさえぎるものがなければ中腹は暖かいままでいられますが、並木や土手は冷気をせき止めます。
斜面のどちら側が最も日を受けますか。
北半球では南向きの斜面、南半球では北向きの斜面が最も日を受けます(eXtension)。コート・ドールの斜面は、その多くが昇る太陽に向かって南東に面しています(BIVB)。暑い土地では、涼しい向きが好まれることもあります。
情報源
- NASAグレン研究センター — 地球大気モデル(メートル法)
- オックスフォード・リファレンス — ICAO標準大気
- 米国海洋大気庁・国立気象局 — 用語集:気温減率
- 世界保健機関(WHO):紫外線(UV)に関するQ&A
- Berli ほか(2011年):太陽光のUV-BとABAはブドウのフェノール代謝に関与し、果皮のポリフェノール生合成を高める(Journal of Agricultural and Food Chemistry、PubMed 抄録)
- 高標高ブドウ畑における微細な地形気候のパターンとその意味(メンドーサ、グアルタジャリーのモナステリオ畑)、Cuadernos de Investigación Geográfica
- ペンシルベニア州立大学エクステンション — ブドウの春の霜・凍結被害を理解し防ぐ
- eXtension(協同普及サービス)— ブドウ畑の立地選び
- BIVB ブルゴーニュワイン委員会 — ブルゴーニュ・コート・ドール
- ラインラント=プファルツ観光局 — モーゼルのワイン産地
- Weinland Mosel — データと事実
- StrubとLoose(2021年):急斜面ブドウ栽培の費用面の不利とその維持策、OENO One 55(1)
- DOQプリオラート統制委員会 — DOPプリオラート仕様書(2013年7月 統合版)
- 南チロルワイン協会 — テロワール
