法律がラベルに書かせていること
ワインのラベルは、デザインである前に、法律で決められた表示の一覧です。EU では、製品の区分(たとえば「ワイン」)、原産地呼称保護(PDO)または地理的表示保護(PGI)をもつワインならその用語と名称、実アルコール度数、由来(原産国)、瓶詰め者の名前が義務表示事項に含まれます。2023年12月8日以降に製造されたワインには、原材料の一覧と栄養成分表示も求められます。
米国では連邦の規則が義務表示を定めており、ブランド名、ワインのクラスまたはタイプ、瓶詰め者の名前と所在地、内容量、アルコール度数、そして該当する場合は亜硫酸塩の表示が含まれます。
どの瓶でも、順に読む価値のある表示が4つあります。産地、品種と収穫年、アルコール度数、そして誰が瓶詰めしたかです。どの表示も規則につながっていて、その言葉が何を保証するかを教えてくれるのは、文字の大きさや書体ではなく規則のほうです。以下では4つの手がかりを一つずつ取り上げ、続いて亜硫酸塩とオーガニックのロゴという細かな表示を見て、最後に2つの演習で確かめます。
文字を省いて描いた一般的な瓶と表ラベルです。帯の一本一本が一つの表示を表します。注記は表示の項目と、その背後にある規則を示し、数値は本文で説明する法定の最低比率と、アルコール度数の許容差です。表示の位置は瓶ごとに異なり、形と色は説明のための表現です。
図の内容を文章・表で読む
- 生産者・ドメーヌ名 — EU では château・domaine は経営体を示す限定用語
- 産地名 — PDO・PGI・AVA:名称の背後に規則がある
- 収穫年 — その年の収穫が85%以上(EU・日本)、米国 AVA では95%
- 品種 — 85%以上(EU・日本)、米国の一般規則では75%以上
- 瓶詰め者 — 誰が瓶詰めしたか。米国の Estate Bottled には厳しい条件
- アルコール度数(% vol) — 許容差:0.5(EU)、1.5 または 1.0(米国)
手がかり1:産地 — PDO、PGI、AVA、日本ワイン
EU では、原産地呼称保護(PDO)のワインは、定められた地域で収穫したぶどうだけで造らなければなりません。地理的表示保護(PGI)では、ぶどうの85%以上がその地域産であることが求められます。PDO にはそれぞれ生産基準書(フランスでは cahier des charges、スペインでは pliego de condiciones)があり、認められる品種を定め、呼称によっては収量や植栽密度などの規則も定めています。
ヨーロッパのラベルの多くが産地を前面に出し、品種を書かないこともあるのはこのためです。ただし産地名が一つの品種を意味するとは限りません。リオハの生産基準書は、認められる赤ワイン用品種としてテンプラニーリョ、ガルナッチャ、グラシアーノ、マスエロ、マトゥラナ・ティンタなどを挙げており、赤のリオハはブレンドでありえます。
米国の AVA(American Viticultural Area)は、境界で定められたぶどう栽培地域です。ラベルに AVA を表示するには、ワインの85%以上がその地域で栽培されたぶどうに由来しなければなりません。州や郡の名前なら75%以上です。これらの連邦規則が扱うのはぶどうがどこで育ったかであり、認められる品種の一覧や収量の上限はありません。
日本では、国税庁の「果実酒等の製法品質表示基準」が、国産ぶどうのみを原料とし日本国内で製造された果実酒を「日本ワイン」と定めています。日本ワインのラベルに地名を表示できるのは、その地名が示す範囲で収穫したぶどうを85%以上使い、その範囲で醸造した場合です。
格付けの言葉が保証すること、しないこと
格付けのように聞こえる言葉が、すべて同じ種類の用語とは限りません。呼称の生産基準書で定められているものもあれば、生産者の歴史的な序列を記録したものもあります。
「Grand Cru Classé en 1855」は、1855年に作られたボルドーのシャトーの格付けを指します。たとえばサンテステフのシャトー・カロン・セギュールは、1855年に第3級に格付けされたと説明しています。格付けはシャトーに与えられたもので、それ自体はぶどう畑の規則を定めていません。格付けされたポイヤックを縛るのは AOC ポイヤックの生産基準書で、これは格付けの有無にかかわらずすべてのポイヤックに適用されます。認められる品種はカベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール、コット(マルベック)、メルロ、プティ・ヴェルドです。収量は57 hL/ha、上限は63 hL/haで、植栽密度は1ヘクタールあたり7,000本以上と定められています。
熟成の区分を示す言葉もあります。リオハのクリアンサ、レセルバ、グラン・レセルバは、生産基準書が最低熟成期間で定めた伝統的表現です。格付けの言葉は、ワインが満たした規則や生産者の歴史についての情報として読み、測定された点数として読まないことが大切です。
手がかり2:品種と収穫年 — 85%と75%の規則
ラベルの品種名は比率の約束であり、その比率は法律によって違います。EU では、単一の品種名を表示できるのはその品種が85%以上の場合です。2つ以上の品種を表示するなら、それらで100%を占め、比率の多い順に並べなければなりません。収穫年を表示するには、ぶどうの85%以上がその年に収穫されている必要があります。
米国の連邦規則は、品種については緩く、AVA を表示する場合の収穫年については厳しくなっています。品種名には一般にその品種が75%以上必要で、品種名を書くラベルには原産地の表示も必要です。収穫年は、産地が AVA ならその年のぶどうが95%以上、州や郡などそれ以外の産地なら85%以上です。
日本ワインはどちらも85%が基準です。表示する品種が85%以上、表示する年に収穫したぶどうが85%以上でなければなりません。
つまり「カベルネ・ソーヴィニヨン」と書かれた瓶には、EU の規則なら最大15%、米国の一般規則なら最大25%のほかの品種が入りえます。正確なブレンドを知りたいときは、裏ラベルや生産者のテクニカルシートを見ます。そこに書かれていることがあります。
ラベルに産地・単一品種・収穫年を表示するために必要なぶどうの最低比率です。米国は連邦の規則、日本は「日本ワイン」と表示するワインの基準です。
図の内容を文章・表で読む
| EU | 米国(連邦) | 日本(日本ワイン) | |
|---|---|---|---|
| 産地名 | PDO:全量がその地域産、PGI:85%以上 | AVA:85%以上、州・郡:75%以上 | その地の収穫が85%以上、かつその地で醸造 |
| 品種を一つだけ表示 | その品種が85%以上 | 75%以上(一般規則) | 85%以上 |
| 収穫年 | その年の収穫が85%以上 | AVA 表示なら95%以上、それ以外は85%以上 | 85%以上 |
手がかり3:アルコール度数と法定の許容差
ラベルのアルコール度数は申告された値で、厳密な測定値ではありません。どの法制度も許容差を認めています。EU では実アルコール度数を % vol で表示し、分析値との差は0.5% vol以内でなければなりません。スパークリングワイン、リキュールワイン、瓶で3年を超えて保存された PDO・PGI ワインなど一部の製品には、より広い0.8% volが認められます。したがって13.5% volと表示されたスティルワインは、13.0%から14.0%の間にあります。
米国の連邦規則はさらに幅が広く、14%以下のワインはプラスマイナス1.5ポイント、14%を超えるワインはプラスマイナス1.0ポイントです。ただし許容差によって14%の線をどちら向きにもまたいではいけません。そのため、表示13.5%のワインは12.0%から14.0%、表示14.0%なら12.5%から14.0%、表示14.5%なら14.0%を超え15.5%以下となります。14%以下のワインでは、数値の代わりに「table wine」や「light wine」と書くことさえ認められています。
実際の教訓は、瓶どうしを慎重に比べることです。表示が0.5度違う2本が同じ強さのこともあり、同じ数値でもヨーロッパと米国では認められる幅が違います。
最近瓶詰めしたスティルワインについて、表示値が認める実際の度数の幅を示します。米国では許容差によって14%の境を越えられないため、表示14.0%は14.0%以下、表示14.5%は14.0%超を意味します。
図の内容を文章・表で読む
表示値ごとに認められる実際のアルコール度数(% vol)
- EU スティルワイン 13.5% vol: 13〜14 % vol
- 米国 表示13.5%: 12〜14 % vol
- 米国 表示14.0%: 12.5〜14 % vol
- 米国 表示14.5%: 14〜15.5 % vol
手がかり4:誰が瓶詰めしたか — シャトー、ドメーヌ、Estate Bottled
EU のラベルには瓶詰め者の表示が必要で、さらに踏み込んだ言葉もあります。EU の規則では、経営体を示す用語(フランス語では château や domaine など)は、その経営体の畑で収穫したぶどうだけを使い、醸造をすべてその経営体で行った PDO・PGI ワインにしか使えません。「mis en bouteille au château」や「mis en bouteille au domaine」という表示は、ぶどう・醸造・瓶詰めを一つの名前のある生産者に結びつけます。
ラベルが「mis en bouteille par」に続けて会社名を書いているだけなら、それは瓶詰めの責任を誰が負ったかを示します。それだけでは、ぶどうがどこで育ったかはわかりません。それを示すのは産地の表示です。
米国の「Estate Bottled」は、瓶詰めしたワイナリーが表示された AVA の中にあり、その AVA 内で所有または管理する土地でぶどうをすべて栽培し、破砕・発酵・仕上げ・熟成・瓶詰めを、ワインが施設の外に出ることなく一貫して行った場合にだけ使えます。そのため Estate Bottled と書くラベルには AVA の表示も必要です。
どちらの言葉も品質の等級ではありません。畑から瓶までの流れを誰が管理したかを示すもので、そのワインに責任を負うのは誰かを教えてくれます。
AI
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表ラベルと裏ラベル
画像:Maison Apéro(生成画像) · Maison Apéro original
細かな表示:亜硫酸塩とオーガニックのロゴ
二酸化硫黄と亜硫酸塩は EU のアレルゲン一覧に含まれ、総二酸化硫黄が10 mg/Lを超えると表示が義務になります。米国の規則では、10 ppm以上含むワインに「Contains sulfites」の表示が必要です。どちらも、亜硫酸塩を添加したかどうかではなく、ワインで測った濃度が基準です。したがってこの表示だけでは、ワインの造り方はわかりません。
EU のオーガニックロゴは、そのワインが EU の有機規則に基づいて認証されたことを示します。この規則は、畑と、有機ワインに認められる醸造方法の両方を対象にしています。そのほかの環境関連のロゴは、それぞれ独自の規則をもつ制度のものです。法的な用語ではなく、その制度のもとでの主張として読みます。
演習1:品種を書いていないリオハのラベル
【設問】
スペインのラベルに「Rioja · Denominación de Origen Calificada · Gran Reserva · 2017」とあり、品種の表示はない。(1) 品種を書く必要がない理由と、このワインに入りうる品種と実際に入っている品種をどこで確かめるか、(2) 年の表示が保証すること、(3) Gran Reserva がどのような種類の用語かを説明せよ。
【模範解答】
(1) このラベルは原産地呼称保護(PDO)を前面に出しており、品種の表示は任意である。リオハの生産基準書は認められる品種を定めており、赤ワインではテンプラニーリョ、ガルナッチャ、グラシアーノ、マスエロ、マトゥラナ・ティンタなどが含まれるので、ブレンドでありうる。実際のブレンドは生産者の技術情報で確かめる。たとえば CVNE のテクニカルシートは、クネ・グラン・レセルバ2017をテンプラニーリョ85%、グラシアーノ10%、マスエロ5%としている。(2) EU の規則により、ぶどうの85%以上が2017年に収穫されている。(3) グラン・レセルバは、リオハの生産基準書が最低熟成期間で定めた熟成の区分であり、熟成のさせ方を示す言葉で、畑の格付けではない。
【採点基準(10点)】
・PDO を特定し、許される品種は生産基準書が定め、実際のブレンドはテクニカルシートで確かめると説明している(4点)
・収穫年の表示にはその年のぶどうが85%以上必要という EU の規則を述べている(3点)
・グラン・レセルバを、生産基準書が定める熟成の用語であり畑の格付けではないと説明している(3点)
演習2:ナパ・ヴァレーとポイヤックのラベル
【設問】
最近瓶詰めされた2本を比べる。ラベルA「Napa Valley · Cabernet Sauvignon · Estate Bottled · Alc. 14.5% by vol.」、ラベルB「Pauillac · Appellation Pauillac Contrôlée · Grand Cru Classé en 1855 · Mis en bouteille au château · 13.5% vol」。(1) それぞれのワインのぶどうを決める規則、(2) それぞれの瓶詰め表示が求める条件、(3) それぞれの実際のアルコール度数がとりうる範囲を説明せよ。
【模範解答】
(1) ラベルA:米国の一般規則により、ワインの75%以上がカベルネ・ソーヴィニヨンで、85%以上がナパ・ヴァレー AVA で栽培されたぶどうに由来しなければならない。AVA の規則には認められる品種の定めも収量の上限もない。ラベルB:AOC ポイヤックの生産基準書は、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール、コット(マルベック)、メルロ、プティ・ヴェルドだけを認め、収量を57 hL/ha、上限を63 hL/haとし、1ヘクタールあたり7,000本以上の植栽を求める。1855年の格付けはそれ自体で畑の規則を加えない。(2) Estate Bottled:ワイナリーがナパ・ヴァレー AVA にあり、そこで所有または管理する土地でぶどうをすべて栽培し、自らの施設で一貫して醸造・瓶詰めしたこと。Mis en bouteille au château:château という用語は、そのシャトーの畑のぶどうだけを使い、醸造をすべてそのシャトーで行ったことを求める。(3) ラベルA:14.0%を超え15.5%以下。14%を超えるワインの米国の許容差は1.0ポイントで、許容差によって14%以下になってはならないため。ラベルB:13.0%から14.0% vol。EU の許容差が0.5% volのため。
【採点基準(10点)】
・米国の品種と AVA の比率を、AOC の品種一覧・収量・植栽密度と対比している(4点)
・Estate Bottled と château という用語の条件を述べている(3点)
・14%の境を含めて、2本のアルコール度数の範囲を求めている(3点)
産地
- PDO・PGI・AVA・日本ワインの産地名を見つける
- その背後の生産基準書や境界を確かめる
- 地域・品種・収量など何が決まっているかを押さえる
品種と収穫年
- 表示があれば品種と年を読む
- 基準を当てはめる:EU と日本は85%、米国の品種名は75%
- 正確なブレンドは裏ラベルやテクニカルシートで確かめる
アルコール度数
- % vol の数値を読む
- 許容差を当てはめる:EU は0.5、米国は1.5または1.0
- その幅を意識して瓶どうしを比べる
瓶詰め者
- 誰が瓶詰めしたかを見つける
- 経営体を示す用語や Estate Bottled を探す
- 畑から瓶までを誰が管理したかを知る
よくある質問
ワインラベルのアルコール度数はどのくらい正確ですか?
表示は法定の許容差つきの申告値です。EU では分析値との差は0.5% vol以内(スパークリングワインなど一部の製品は0.8% vol)です。米国では14%以下のワインは1.5ポイント、14%を超えるワインは1.0ポイントの許容差があり、14%の境をまたぐことはできません。
「mis en bouteille au château」や「Estate Bottled」とはどういう意味ですか?
EU では château や domaine など経営体を示す用語は、その経営体の畑のぶどうだけを使い、醸造をすべてその経営体で行った PDO・PGI ワインに限られます。米国の Estate Bottled は、ワイナリーが表示された AVA の中にあり、そこで所有または管理する土地でぶどうをすべて栽培し、自らの施設で一貫して醸造・瓶詰めしたことを意味します。
なぜラベルに「亜硫酸塩含有」と書かれているのですか?
亜硫酸塩は表示が必要なアレルゲンだからです。EU では総二酸化硫黄が10 mg/Lを超えると、米国では10 ppm以上で表示が必要です。基準はワインで測った濃度なので、この表示だけでは亜硫酸塩を添加したかどうかはわかりません。
ラベルに品種名を書くには、その品種がどれだけ必要ですか?
EU と日本ワインでは85%以上、米国の連邦の一般規則では75%以上です。EU で2つ以上の品種を表示する場合は、それらで100%を占める必要があります。
情報源
- EUR-Lex — 規則(EU)1308/2013(ワイン:PDO・PGI の定義と義務表示事項)
- EUR-Lex — 規則(EU)2021/2117(2023年12月8日以降に製造されたワインの原材料・栄養成分表示)
- EUR-Lex — 委任規則(EU)2019/33(ワインの表示:アルコール度数の許容差、収穫年、品種、経営体を示す用語)
- EUR-Lex — 規則(EU)1169/2011 消費者への食品情報提供、附属書 II(二酸化硫黄と亜硫酸塩)
- EUR-Lex — 規則(EU)2018/848 有機生産(有機ワインの規則を含む)
- eCFR — 27 CFR 4.23 品種表示
- eCFR — 27 CFR 4.25 原産地表示(AVA・州・郡)
- eCFR — 27 CFR 4.26 Estate Bottled
- eCFR — 27 CFR 4.27 収穫年の表示
- eCFR — 27 CFR 4.32 義務表示事項(亜硫酸塩の表示を含む)
- eCFR — 27 CFR 4.36 アルコール分の表示(許容差と14%の境)
- eCFR — 27 CFR 9.23 ナパ・ヴァレー(AVA)
- INAO — AOC ポイヤック生産基準書(品種・収量・植栽密度)
- リオハ統制委員会 — DOCa リオハ生産基準書(2023年)
- シャトー・カロン・セギュール — 1855年の格付け
- CVNE — クネ・グラン・レセルバ2017 テクニカルシート
- 国税庁 —「果実酒等の製法品質表示基準」について
