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急斜面と粘板岩――モーゼルのリースリングを読み解く

モーゼルの急斜面と粘板岩、冷涼な気候、ドイツのワイン法がリースリングをどう形づくるのかを、測定された事実と、よく語られるが測られていない説とに分けて解説します。プレディカートと甘辛表示の違いも整理します。

モーゼルとは、モーゼル川とその支流ザール川・ルーヴァー川の谷に広がる、ドイツに13ある高品質ワインの生産地域(アンバウゲビート)のひとつである。

学習テーマ:テロワールと気候

Maison Media Editorial · 公開日 · 更新日

朝霧の中、蛇行する川を見下ろす暗い色の岩の急斜面に段々畑のブドウ畑が広がり、対岸に村と教会の尖塔、古城の廃墟が見える(生成画像)
生成画像によるイメージです。川の湾曲部を見下ろす岩がちの急斜面の段々畑と、対岸の村や古城の廃墟を描いたもので、特定の畑を写したものではありません。

画像:Maison Apéro(生成画像) · Maison Apéro original

ドイツの地図。ピンがモーゼル(Mosel)の位置を示すモーゼル(Mosel)とその周辺の地図。ピンがモーゼルの位置を示す
モーゼル(Mosel) · ドイツ地図:Maison Apéro(Natural Earth のデータに基づく。パブリックドメイン)

産地の範囲――一本の川、二つの支流、名称の変更

産地名は川の名に由来します。フランス語ではモゼル(Moselle)、ドイツ語ではモーゼル(Mosel)と呼ばれる川で、ブドウ畑は蛇行する本流の谷と、支流ザール川・ルーヴァー川の谷に沿って広がります。正式名称は2007年まで「モーゼル・ザール・ルーヴァー(Mosel-Saar-Ruwer)」で、それ以降は単に「モーゼル」です。

この産地を代表する品種はリースリングです。そのワインは一般にボディが軽く、アルコール度数が低めで、酸が高いものです。本稿は三つの問いをたどります。なぜ畑がこれほどの急斜面にあるのか。粘板岩は何をして、何をしないのか。ドイツのワイン法は、収穫時のブドウの熟度と、仕上がったワインの甘さをどう分けているのか。

モーゼルについては、測定値のように聞こえるほど繰り返されてきた説があります。粘板岩が熱を蓄えて夜にブドウを温める、岩石がワインにミネラルの味を与える、といったものです。

斜度・畑の向き・標高

モーゼルはヨーロッパでも屈指の急斜面の畑で知られます。代表例はブレム村の上にあるブレマー・カルモント(Bremmer Calmont)で、最も急な部分の斜度として公表されている値は約65〜68度の幅があります。

角度と同じくらい重要なのが向きです。カルモントの石積みの段々畑は南向きで、日光を受けてその熱を放つと説明されています。川が蛇行しているため谷の斜面はさまざまな方角を向いています。

このような斜面では、機械による作業はほとんどできません。最も急な区画は擁壁で支えた段々畑と階段でできており、作業の多くは専用の器具を使いながら人の手で行われるため、労働集約的になります。

川から立ち上がる非常に急な段々畑の斜面。石積みの壁と階段、各段のブドウ、南側の太陽、丘の上の森、石の多い粘板岩の土とブドウの根、下へ抜ける雨水を描いた断面のイラスト

段々畑の斜面は、ブレマー・カルモントの最も急な部分について公表されている値(約65〜68度)の下限、65度で描いています。モーゼルの多くの斜面はこれほど急ではありません。断面は石の多い粘板岩の土で、雨水が下へ抜けていく様子を示します。形と色は説明のための表現です。

図の内容を文章・表で読む
  • 南向きで太陽に面する — 石は日光を吸収して熱を放つと説明されている。効果の大きさは測定されていない
  • 段々畑・擁壁・階段 — 機械はほとんど入れず、作業の多くは人の手で行う
  • 65度で描画 — カルモントの最も急な部分の公表値は約65〜68度
  • 粘板岩の土 — 水はけがよいとされ、フィロキセラの広がりを抑えるため自根のブドウが多いと報告されている

粘板岩――どんな岩で、何をすると言われているのか

粘板岩(スレート)は、頁岩のような堆積岩が変成してできたきめの細かい岩で、薄く平らな板状に割れます。モーゼルの斜面はデボン紀の粘板岩で知られています。その古さの目安として、フンスリュック高地の名を冠した下部デボン系の地層「フンスリュック粘板岩」は、約4億800万〜4億年前のものとされています。

この斜面の粘板岩には、よく三つの働きが挙げられます。第一に排水で、土壌は水はけがよいと説明されています。第二に温かさで、暗い色の石が昼に日光を吸収し、その後に熱を放つと説明されています。第三がフィロキセラへの抑止で、これは第5節で扱います。最初の二つは説明されているだけで測定されていません。

モーゼルのリースリングのテイスティングノートには「スレート」「濡れた石」といった言葉がよく使われます。これらはテイスティングの語彙として扱ってください。こうしたテイスティングの言葉だけで、岩石の鉱物がワインに移ってその味を生むとは判断できません。

石の多いブドウ畑の斜面で、青灰色の薄い板状の石を両手に持つ人と、眼下の川の湾曲部と村々(生成画像)
生成画像によるイメージです。石片に覆われた斜面と木の支柱に仕立てたブドウを背に、平たい粘板岩の板を手に持つ様子を描いたもので、特定の畑を写したものではありません。

画像:Maison Apéro(生成画像) · Maison Apéro original

冷涼な気候と熟度

モーゼルは冷涼な気候のワイン産地です。そのリースリングは一般に、ボディが軽く、アルコール度数が低めのことが多く、酸が高いと説明されています。

ブドウがどこまで熟すかは畑と年によって変わり、ドイツのワイン法はプレディカーツヴァインの等級をその熟度、つまり収穫時のモスト重量(果汁の糖度の指標)に結びつけています。熟度とラベルの関係は第6節で説明します。

自根のブドウと手作業

フィロキセラはブドウの根に寄生する昆虫で、そのためにヨーロッパのブドウの多くは、いまでは抵抗性のあるアメリカ系の台木に接ぎ木されています。専門家の解説によれば、モーゼルの急で水はけのよい粘板岩の土壌はこの害虫が広がるのを抑え、モーゼルには接ぎ木をしない自根(ドイツ語でヴルツェルエヒト、wurzelecht)のブドウが今も多く残っています。

これは、粘板岩によってブドウが免疫を持つという意味ではありません。報告されているのは広がりの抑制であって、害虫の不在ではありません。

古いブドウを守るこの斜面は、同時に栽培を難しくもします。機械が入れない場所では、剪定、樹冠の手入れ、収穫を、段々畑と階段の上で人の手で行います。

プレディカート――収穫時の熟度と、補糖の禁止

ドイツワインの上位の品質区分は、クヴァリテーツヴァイン(Qualitätswein)とプレディカーツヴァイン(Prädikatswein)です。プレディカーツヴァインには、モスト重量で測る収穫時のブドウの熟度に基づいて、次の六つの肩書きのいずれかが付きます。カビネット、シュペートレーゼ、アウスレーゼ、ベーレンアウスレーゼ、アイスヴァイン、トロッケンベーレンアウスレーゼです。

要となる規則は、プレディカーツヴァインには補糖が認められないことです。アルコール度数を上げるために果汁へ糖を加えることはできず、アルコールはすべてブドウ自身の糖から生まれます。一方、クヴァリテーツヴァインは、EUとドイツの規則の範囲内で補糖できます。

プレディカートは、仕上がったワインがどれだけ甘いかを直接は示しません。カビネットやシュペートレーゼは、辛口まで発酵させることも、糖を残すこともできます。甘さそのものは、ラベルの別の表示で確かめます(次節)。

ブドウの枝に下がる六つの房のイラスト。カビネットとシュペートレーゼは熟した淡い色の房、アウスレーゼは金色の房、ベーレンアウスレーゼは貴腐の付いた房、アイスヴァインは雪をかぶって凍った房、トロッケンベーレンアウスレーゼは干からびた粒

それぞれの房は、各等級が収穫時に求めるブドウの状態を、カビネットからトロッケンベーレンアウスレーゼまで描いたものです。熟度はモスト重量で測ります。どのプレディカーツヴァインも補糖は認められず、ワインの甘さは別の用語で示されます。形と色は説明のための表現です。

図の内容を文章・表で読む
  • カビネット — 熟したブドウ。最も低い等級。辛口も甘口もある
  • シュペートレーゼ — 遅摘みの、より熟したブドウ。辛口も甘口もある
  • アウスレーゼ — 選び抜いた完熟の房。甘口が多いが辛口もある
  • ベーレンアウスレーゼ — 粒選りの過熟果。貴腐を伴うことが多い。甘口
  • アイスヴァイン — 樹上で凍ったブドウを凍ったまま搾る。甘口
  • トロッケンベーレンアウスレーゼ — 貴腐で干からびた粒を選ぶ。甘口

ラベルの甘辛表示と酸の役割

スティルワインの糖分を示す用語はEUの規則で定められており、ドイツのラベルではドイツ語の形が使われます。トロッケン(trocken、辛口)、ハルプトロッケン(halbtrocken、中辛口)、リープリッヒ(lieblich、中甘口)、ズュース(süß、甘口)です。基準は1リットルあたりの残糖のグラム数で決まります。

トロッケンと表示できるのは、残糖4 g/L以下のワイン、または総酸量(酒石酸換算)が残糖を2 g/L超えて下回らない場合に限り、残糖9 g/L以下のワインです。ハルプトロッケンは12 g/L以下、または総酸量が残糖を10 g/L超えて下回らない場合に限り18 g/L以下です。リープリッヒはハルプトロッケンの上限を超えて45 g/L以下、ズュースは45 g/L以上です。

モーゼルにとって興味深いのは、この酸の条件です。残糖9 g/L、総酸量7 g/Lのリースリングは、酸が糖より2 g/Lしか低くないため、トロッケンの条件を満たします。同じ9 g/Lでも総酸量が5 g/Lなら、酸が糖より4 g/L低いため条件を満たさず、ハルプトロッケンの範囲になります。同じように、残糖18 g/L、総酸量8 g/Lのワインは、酸が糖より10 g/L低いので、ハルプトロッケンと表示できます。つまりこの規則は、酸の高いワインほど、同じ用語のもとでより多くの糖を持てるようにしています。

ラベルに甘辛の用語がない場合、ラベルだけではそのワインの甘さはわかりません。残糖と総酸量を記した生産者の技術資料があれば、それで確かめられます。

4つの例のワインについて残糖と総酸量を並べ、EUの甘辛用語のどれを表示できるかを示した表。ワインAとBはトロッケン、ワインCとDはハルプトロッケン

実在のワインではなく、説明のための例を、スティルワインの糖分に関するEUの用語に当てはめたものです。総酸量は酒石酸換算。トロッケン(trocken)=辛口、ハルプトロッケン(halbtrocken)=中辛口。

図の内容を文章・表で読む
図の内容(表)
残糖総酸量表示できる用語
ワインA4 g/L問わないトロッケン(基本の上限内)
ワインB9 g/L7 g/L(残糖より2 g/L低い)トロッケン(酸の条件を満たす)
ワインC9 g/L5 g/L(残糖より4 g/L低い)ハルプトロッケン(トロッケンには酸が足りない)
ワインD18 g/L8 g/L(残糖より10 g/L低い)ハルプトロッケン(酸の条件を満たす)

グラスの中で――甘さと酸を分けて見る

ラベルを頭に入れつつ、グラスで確かめます。まずアルコールとボディを見ます。モーゼルのリースリングは、どちらも軽いのが典型です。次に、酸だけを単独で評価します。口の中にどれだけ唾液が湧くかが手がかりです。三番目に、甘さを別に評価します。口に含んだ瞬間から余韻まで、どれだけ糖を感じるかです。

そのうえで三つを合わせます。酸が糖を目立たなくしているかどうか、トロッケンと表示されたワインでも熟した印象があるかどうかを確かめてください。生産者が技術資料を公開していれば、自分の印象を残糖と総酸量の値と照らし合わせます。

最後に、香りを自分の言葉で書きます。柑橘、リンゴ、白い花、スレートといった語はテイスティングノートによく見られますが、それは印象であって、ワインの産地の証拠ではありません。

記述式演習1:急斜面と粘板岩

【設問】
モーゼルの急斜面がリースリングの成熟を助けると言われる理由を説明し、そのうち測定されている事柄と、説明されているだけの事柄を区別しなさい。

【模範解答】
最も急な畑は非常に急で、ブレマー・カルモントの最も急な部分の斜度として公表されている値は約65〜68度です。その段々畑は南向きで太陽に面し、石は日光を吸収して熱を放つと説明されています。粘板岩の土壌は水はけがよいとも説明されています。斜度は測定値です(ただし資料によって多少の差があります)。一方、石による保温効果と排水性は説明されているものの、その大きさは測定されていません。機械作業がしばしば不可能で、最も急な段々畑は主に人の手で耕作されるという費用面にも触れると、答えが完結します。

【確認ポイント】
・カルモントの名を挙げ、斜度を幅(約65〜68度)で示している
・南向きという向きを日光と結びつけている
・保温と排水は測定ではなく説明であると述べている
・現実的な帰結として手作業に触れている

記述式演習2:一枚のラベルの二つの用語

【設問】
モーゼルのラベルに「Riesling Kabinett trocken」とあります。二つのドイツ語がそれぞれ何を示すか、また発酵前に糖が加えられた可能性があるかを説明しなさい。

【模範解答】
カビネットはプレディカートの一つで、モスト重量で測る収穫時のブドウの熟度を示します。このワインはプレディカーツヴァインなので補糖は認められず、アルコールを上げるための糖は加えられていません。トロッケンはEUが定める別の甘辛用語で、残糖が4 g/L以下、または総酸量が残糖を2 g/L超えて下回らない場合は9 g/L以下であることを示します。したがって残糖が9 g/Lなら、トロッケンと名乗るには総酸量が7 g/L以上必要です。カビネットだけでは、辛口か甘口かはわかりません。

【確認ポイント】
・カビネットを甘さではなく、収穫時の熟度の等級として説明している
・プレディカーツヴァインには補糖が認められないと述べている
・トロッケンの基準(4 g/L、酸の条件つきで9 g/L)を示し、当てはめている
・二つの用語が別々の問いに答えていると結論づけている

斜面からグラスまで

手順 1

畑

  • 急斜面、一部は南向き(カルモントは約65〜68度)
  • 水はけがよいと説明されるデボン紀の粘板岩土壌
手順 2

栽培

  • 機械の入れない段々畑での手作業
  • 粘板岩がフィロキセラの広がりを抑え、自根のブドウが多い
手順 3

ワインとラベル

  • 軽いボディ、低めのアルコール、高い酸
  • プレディカートは熟度を、トロッケンやズュースは甘さを示す
畑からグラスまでを単純化した因果の流れです。粘板岩の保温効果は説明されているもので、測定されたものではありません。

よくある質問

モーゼルで最も急な畑は、どのくらいの斜度ですか?

ブレム村の上にあるブレマー・カルモントはヨーロッパで最も急な畑とよく呼ばれ、最も急な部分の斜度として公表されている値は約65〜68度の幅があります。このような斜面では機械がほとんど使えないため、段々畑は主に人の手で耕作されます。

モーゼルのリースリング・カビネットは必ず甘口ですか?

いいえ。カビネットは収穫時のブドウの熟度に基づくプレディカート(等級)で、辛口まで発酵させることも、糖を残すこともできます。甘さはトロッケン(辛口)などの別の用語で示され、EUの規則ではトロッケンは残糖4 g/L以下、酸が十分に高い場合は9 g/L以下を意味します。

なぜモーゼルには自根のブドウがあるのですか?

専門家の解説によれば、急で水はけのよい粘板岩の土壌が、ヨーロッパのブドウの多くを接ぎ木へと追いやった根の害虫フィロキセラの広がりを抑えるためです。そのためモーゼルでは今も多くのブドウが自根(wurzelecht)で育っていますが、粘板岩がブドウに免疫を与えるわけではありません。

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