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貴腐ワインの国別比較:ソーテルヌ、ロワール、アルザス、ドイツ、オーストリア、トカイ

貴腐でしぼんだブドウから甘口ワインを造る国は複数ありますが、最低基準はそれぞれ異なる単位で定められています。本稿はソーテルヌ、ロワール、アルザス、ドイツ、オーストリア、トカイの規定を、単位を変えずに並べて比べます。

貴腐とは、カビの一種ボトリティス・シネレアの有益な作用で、熟した健全なブドウに湿った朝と乾いた天候が続くと、果粒がしぼんで糖が濃縮され、甘口ワインの原料になる現象である。

Maison Media Editorial · 更新日 ·

この記事で確認した情報源: INAO — 原産地呼称「ソーテルヌ」の仕様書 · INAO — 原産地呼称「バルサック」の仕様書 · INAO — 原産地呼称「カール・ド・ショーム」の仕様書 · INAO — 原産地呼称「ボンヌゾー」の仕様書 · INAO — 原産地呼称「アルザス」の仕様書(ヴァンダンジュ・タルディヴとセレクション・ド・グラン・ノーブルの規定) · アルザスワイン委員会(CIVA)— セレクション・ド・グラン・ノーブル · RIS(オーストリア連邦法令)— 2009 年ワイン法 第 11 条 プレディカーツヴァイン · ワイン規則(WeinV 1995)— gesetze-im-internet.de · ダルムシュタット行政管区 — 最低果汁糖度 · ドイツワイン協会 — 果汁糖度 · Wines of Tokaj — アスー:セラーで · Tokaj Today — トカイの新しい製品仕様書が公表された · ボトリティス・シネレアは貴腐と灰色かび病でブドウ果粒に異なる反応を起こす(PMC11333459) · Blanco-Ulate ほか — 貴腐の間の白ブドウ果粒の発達と代謝の可塑性(ボトリティス・シネレアへの応答) · 収穫後の陰干し中の貴腐の誘導がガルガーネガ果実のメタボロームを変える(PMC5478704)

半分は朝霧、半分は午後の日差しと風の中にあるブドウの畝と、ふっくらした果粒としぼんだ貴腐の果粒を並べた手描きのイラスト
霧の朝と乾いた午後、そして生まれるしぼんだブドウ。イラスト:Maison Apéro

イラスト:Maison Apéro。記事の出典をもとに描いた図です(AI 生成画像ではありません)

貴腐は果粒に何をするか

貴腐はボトリティス・シネレアの働きで、灰色かび病を起こすのと同じ灰色のカビです。熟した健全な果粒に感染します。白ブドウの研究では、貴腐の間に果粒のろう質のクチクラが割れて果粒が脱水し、しぼんで糖が濃縮されることが示されています(Blanco-Ulate ほか)。

カビは果粒の化学組成も変えます。グリセロールなどの糖アルコールが増え、グルコースとフルクトースの比が下がり、酒石酸が減る一方、グルコン酸とムチン酸が蓄積します(Blanco-Ulate ほか、ガルガーネガの研究)。同じカビでも、貴腐と灰色かび病とでは果粒の反応が異なります(PMC11333459)。

果粒がどれだけ水分を失うかの数値は、Maison が確かめた出典がないため、本稿では示しません。

湿った朝と乾いた午後が要る理由

貴腐には、2 種類の天候が順に必要です。湿り気でカビが熟した果粒に感染し、湿りが続けば有害な灰色かび病になります。その後に乾いた天候が来ると果粒が乾き、腐敗は貴腐にとどまります(PMC11333459)。ソーテルヌの仕様書も同じ交代を述べています。湿った夜のあと、日中は速く強い通風があるというものです(INAO)。

シロン川とガロンヌ川が秋の霧を生む仕組みは、ソーテルヌと貴腐の錬金術を扱った記事で説明しており、ここでは繰り返しません。以下の節では、その結果できるブドウについて各国が規定に何を書いているかを比べます。

左半分に霧、右半分に太陽と風の矢印を描いたブドウの畝と、ふっくらした果粒としぼんだ貴腐の果粒を並べた断面のイラスト

出典のあるデータから描いた図

霧でカビが熟した果粒に感染し、乾いた日差しと風が果粒を乾かすので、腐敗は貴腐にとどまります。二つの果粒は、健全な果粒と貴腐の果粒です。形と色は説明のための表現です。

  • 湿った朝 — 霧のなか、熟した健全な果粒にカビが定着する
  • 乾いた午後 — 日差しと風で果粒が乾き、腐敗は貴腐にとどまる
  • 健全な熟した果粒 — ふっくらして皮が無傷
  • 貴腐の果粒 — クチクラが割れ、水が抜け、糖が濃縮される

フランス:ソーテルヌ、バルサック、カール・ド・ショーム、ボンヌゾー、アルザス

ソーテルヌの仕様書は、貴腐がついた過熟のブドウを、トリと呼ばれる数回に分けた手摘みで収穫することを求め、1 リットルの果汁に糖 221 g を良好な成熟の目安としています。ソーテルヌとバルサックのワインは、流通・瓶詰めの時点で、発酵しうる糖(グルコースとフルクトース)を 1 リットルあたり 45 g 以上含まなければなりません。ソーテルヌの収量は 1 ヘクタールあたり 25 ヘクトリットルです。

ロワールのカール・ド・ショームとボンヌゾーは、シュナン・ブラン単一で造ります。カール・ド・ショームは貴腐またはパスリヤージュ(樹上での乾燥)による濃縮を認め、果汁の糖を 1 リットルあたり 298 g と定めます。ボンヌゾーは手作業での複数回の収穫、ブドウの糖 1 リットルあたり 238 g、発酵しうる糖 1 リットルあたり 51 g 以上、1 ヘクタールあたり 25 ヘクトリットルの収量を求めます。ロワールのこの 2 つの数値は INAO 文書の抜粋で確認したもので、全文で再確認します。

アルザスのセレクション・ド・グラン・ノーブルは、収穫時に選別した貴腐果から、ゲヴュルツトラミネール、ミュスカ、ミュスカ・オットネル、ピノ・グリ、リースリングで造ります(CIVA)。AOC アルザスの仕様書は、収穫時の果汁の最低糖度を、果汁 1 リットルあたりの糖の量で、リースリングとミュスカは 276 g、ゲヴュルツトラミネールとピノ・グリは 306 g と定めています。比較として、ヴァンダンジュ・タルディヴ(遅摘み)では、同じ 2 つの品種群に 235 g/L と 257 g/L を定めています。この最低値は 2001 年産から適用されており、そのとき引き上げられました(INAO)。

フランスの 5 つの糖の基準を 1 リットルあたりのグラムで示した棒グラフ:ソーテルヌ 221、ボンヌゾー 238、アルザス SGN のリースリングとミュスカ 276、カール・ド・ショーム 298、アルザス SGN のゲヴュルツトラミネールとピノ・グリ 306

出典のあるデータから描いた図

フランスの各仕様書が定める最低の糖の数値で、収穫時のブドウまたは果汁 1 リットルあたりのグラム数です。ドイツの °Oe、オーストリアの °KMW、トカイの完成ワインの残糖とは比べられません。

ブドウ・果汁の糖(g/L)

  • ソーテルヌ: 221 g/L
  • ボンヌゾー: 238 g/L
  • アルザス SGN — リースリング、ミュスカ: 276 g/L
  • カール・ド・ショーム: 298 g/L
  • アルザス SGN — ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ: 306 g/L

ドイツとオーストリア:果汁糖度の尺度

ドイツのプレディカーツヴァインは、果汁の糖分をエクスレ度(°Oe)で測って区分し、最低値は産地と品種で異なります(ワイン規則)。ドイツワイン協会は、ベーレンアウスレーゼを産地・品種に応じておよそ 110〜128 °Oe、トロッケンベーレンアウスレーゼをおよそ 150〜154 °Oe としています。ラインガウについては、ダルムシュタット行政管区がベーレンアウスレーゼ 125 °Oe、トロッケンベーレンアウスレーゼ 150 °Oe を挙げています。ワイン規則は、ベーレンアウスレーゼには貴腐または少なくとも過熟の果粒を認め、トロッケンベーレンアウスレーゼには大きくしぼんだ貴腐果を求めます。例外的に貴腐が生じなかった場合に限り、しぼんだ過熟果でもよいとしています。プレディカーツヴァインは加糖できません。

オーストリアでは、2009 年ワイン法の第 11 条が、KMW(クロスターノイブルク果汁比重計)度で最低値を定めています。ベーレンアウスレーゼは 25 以上、トロッケンベーレンアウスレーゼは 30 以上、アウスブルッフは 27 以上です。エクスレ度と KMW 度は別の尺度なので、二つの数字を直接比べることはできません。

トカイ:アスー果と残糖

トカイでは、アスー果は貴腐になった果粒を別に摘み、果汁またはベースワインに浸漬したものです(Wines of Tokaj)。2013 年産から、製品仕様書は完成したトカイ・アスーの残糖を 1 リットルあたり 120 g 以上と定めています。従来の 3 プットニョシュと 4 プットニョシュの区分はなくなり、プットニョシュの数をラベルに記すかどうかは任意になりました(Tokaj Today)。アスーは樽で 18 か月以上熟成させます(Wines of Tokaj)。

この数値が測るのはブドウの糖ではなく、ワインに残った糖です。

国をまたいで数字を読む

これらの数字は同じ土俵にありません。フランスは、ブドウまたは果汁の糖(1 リットルあたり 221 g、238 g、298 g)を示し、ソーテルヌ、バルサック、ボンヌゾーではワインの発酵しうる糖の下限(1 リットルあたり 45 g、45 g、51 g)も示します。ドイツとオーストリアは、それぞれの尺度(°Oe と °KMW)で果汁糖度を示します。トカイは、完成したワインの残糖(1 リットルあたり 120 g)を示します。

換算には各法令の比重表が要りますが、本稿の出典には含まれていません。そのため下の表は、各出典の単位のまま並べ、順位は付けません。

貴腐の甘口ワイン 7 つの規定について、何を測るかと定められた最低値を、出典の単位のまま示した表

出典のあるデータから描いた図

各欄は出典の単位と表現をそのまま残しています。果汁の数値と完成ワインの数値は別のものなので、行に順位は付けていません。

図の内容(表)
規定が測るもの定められた最低値
ソーテルヌとバルサックブドウの糖と、ワインの発酵しうる糖221 g/L、45 g/L
カール・ド・ショーム果汁の糖298 g/L
ボンヌゾーブドウの糖と、ワインの発酵しうる糖238 g/L、51 g/L
アルザス SGN品種ごとの果汁の糖276 g/L(リースリング、ミュスカ)/306 g/L(ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ)
ドイツ(BA、TBA)果汁糖度(°Oe)BA はおよそ 110〜128、TBA はおよそ 150〜154
オーストリア(BA、TBA、アウスブルッフ)果汁糖度(°KMW)BA 25、TBA 30、アウスブルッフ 27
トカイ・アスーワインの残糖120 g/L

練習問題:数字を比べる

【設問】
カール・ド・ショームの果汁糖度は 298 g/L、トカイ・アスーの残糖の下限は 120 g/L です。この二つの数字から、カール・ド・ショームのほうが甘いとは言えない理由を説明しなさい。

【模範解答】
二つの数字は測るものが違う。298 g/L は発酵前の果汁の糖で、120 g/L は完成したワインに残る糖の下限である。発酵で果汁の糖の一部はアルコールになるため、果汁の数値だけでは残る糖の量は分からない。甘さを比べるには、完成したワインの糖のように、両方に同じ指標が必要である。

【自己採点(4点)】
・298 g/L が発酵前の果汁の糖だと述べている(1点)
・120 g/L が完成したワインの残糖だと述べている(1点)
・発酵で糖の一部がアルコールになると説明している(1点)
・同じ指標で比べる必要があると結論している(1点)

貴腐:天候から規定まで

手順 1

天候

  • 湿った朝にカビが定着する
  • 乾いた午後に果粒が乾く
  • 腐敗は灰色でなく貴腐にとどまる
手順 2

果粒

  • クチクラが割れて水が抜ける
  • 糖とグリセロールが濃縮される
  • グルコン酸が蓄積する
手順 3

規定

  • フランス:ブドウ・果汁の糖(g/L)
  • ドイツとオーストリア:果汁糖度の尺度
  • トカイ:ワインの残糖
本稿の要約です。規定は国ごとに異なり、数字は直接比べられません。

よくある質問

貴腐とは何ですか。

貴腐は、カビの一種ボトリティス・シネレアの有益な形です。熟した健全なブドウに乾いた天候が続くと、果粒のクチクラが割れて脱水し、糖が濃縮され、グリセロールとグルコン酸が増えます。湿りが続けば、同じカビが灰色かび病を起こします。

貴腐ワインはどれも同じ最低糖度ですか。

いいえ。フランスはブドウまたは果汁の糖を g/L で、ドイツはエクスレ度で、オーストリアは KMW 度(ベーレンアウスレーゼ 25 以上、トロッケンベーレンアウスレーゼ 30 以上、アウスブルッフ 27 以上)で、トカイは完成したワインの残糖 120 g/L で定めます。単位が違うので、数字を直接並べて順位は付けられません。

トカイ・アスーは今もプットニョシュを使いますか。

2013 年産から適用された製品仕様書は、残糖の下限を 120 g/L と定め、従来の 3 プットニョシュと 4 プットニョシュの区分をなくしました。プットニョシュの数をラベルに記すかどうかは任意です。

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