二つの山地に挟まれた谷
ナパ・ヴァレーは二つの山地に挟まれています。西は北部海岸山脈に属するマヤカマス山地、東はヴァカ山地です。この記事では、その枠の中にある二種類のブドウ畑の土地、つまり平らな谷底と、それぞれの山地へ上がっていく斜面を比べます。
さらに大きな枠組みはプレートの動きです。海岸山脈はサンアンドレアス断層とほぼ平行に延びています。この断層はトランスフォーム境界で、太平洋プレートは北米プレートに対して北へ動いています。ヴァカ山地の東には、堆積物に埋められたセントラル・ヴァレー(グレート・ヴァレー)が広がり、その先にシエラネバダ山脈がそびえます。シエラネバダは傾いた断層地塊で、東面は高く険しい崖、西斜面はゆるやかで、グレート・ヴァレーの堆積物の下に消えていきます。
下のブロックダイアグラムは、これらを一枚に並べた模式図です。縮尺はなく、示しているのは互いの位置関係で、距離や高さではありません。
縮尺のない模式的なブロックダイアグラムです。上面が地形、手前の面が断面で、断面の色は土と岩の種類を表します。
図の内容を文章・表で読む
- サンアンドレアス断層はトランスフォーム境界です。西側の太平洋プレートは北米プレートに対して北へ動き、海岸山脈は断層とほぼ平行に延びます。
- カリフォルニア海流は米国西岸沖の冷たい海流で、ほかの大陸西岸の海流と同じく赤道へ向かって流れます。冷たい海の上には、冷たく湿った海洋性の空気の層(マリンレイヤー)ができます。
- 夏には、カリフォルニア内陸の熱い空気が上昇して太平洋の冷たく湿った空気を内陸へ引き込み、暖かい日の多くでナパ・ヴァレーに届く海霧ができます。
- ナパ・ヴァレーは、西の北部海岸山脈に属するマヤカマス山地と、東のヴァカ山地の間にあります。マヤカマス山地は雨陰をつくって冬の太平洋の嵐を弱め、ヴァカ山地はセントラル・ヴァレーの暑さから谷を守ります。
- ナパ・ヴァレーは乾燥した地中海性気候です。
- シエラネバダは傾いた断層地塊で、東面は高く険しい崖、西斜面はゆるやかでグレート・ヴァレーの堆積物の下に消えていきます。
気候:乾燥した地中海性気候、夏の海霧、冬の雨陰
この谷の気候は乾燥した地中海性気候です。二つの山地はそれぞれ役割を持ちます。マヤカマス山地は雨陰をつくり、冬に太平洋から来る嵐を弱めます。雨陰とは、山を越えて下る空気が暖まり雲が消えるため、山地の風下側で降水が少なくなる地域のことです。ヴァカ山地は、セントラル・ヴァレーの暑さから谷を守ります。
夏には霧が来ます。沖合では冷たいカリフォルニア海流が赤道へ向かって南へ流れ、その冷たい海の上に、冷たく湿った海洋性の空気の層(マリンレイヤー)ができます。カリフォルニア内陸で熱い空気が上昇すると、この冷たく湿った太平洋の空気が内陸へ引き込まれ、暖かい時期の大半の日に海霧がナパ・ヴァレーに届きます。
下の図は二つの季節を分けて示します。冬はマヤカマス山地によって弱まる太平洋の嵐、夏は海から引き込まれる霧です。示しているのは原因の順序で、強さではありません。
夏の谷を西から東へ切った断面です。冷たい海の上のマリンレイヤー、二つの山地に挟まれた谷底の霧、内陸で上昇する熱い空気を描いています。左上の小さな絵は、太平洋から来る冬の嵐がマヤカマス山地で雨を落として弱まる様子です。海の上の矢印は空気が内陸へ向かうことだけを示し、霧が谷へ入る道筋は示していません。縮尺はなく、形と色は説明のための表現です。
- 谷の東側のヴァカ山地は、セントラル・ヴァレーの暑さから谷を守ります。
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- マヤカマス山地(西) — 冬は雨陰をつくり、太平洋の嵐は弱まって谷に届く(左上の小さな絵)
- 暑い内陸 — 熱い空気が上昇し、冷たく湿った太平洋の空気を内陸へ引き込む
- マリンレイヤー — 南へ流れる冷たいカリフォルニア海流の上にできる、冷たく湿った空気の層
- 谷底の霧 — 暖かい時期の大半の日に届く
- ヴァカ山地(東) — セントラル・ヴァレーの暑さから谷を守る
谷底と斜面
谷底と山の斜面を比べるとき、大切な問いは二つあります。斜面の畑が朝霧の上にあるかどうか、そしてその土壌が谷底の土壌とどう違うかです。
標高と土壌を知るには、公式の AVA(American Viticultural Area、米国のブドウ栽培地域)の定義と地質図が、霧の上限の高さを知るには、現地の気候観測が手がかりになります。
地質図は、その畑を含む範囲のものでなければなりません。たとえば米国地質調査所(USGS)は、マヤカマス山地中部(USGS の表記は Mayacmas)とガイザーズ地熱地帯の地質図を公開していますが、その題名に挙がっているのはソノマ郡、レイク郡、メンドシーノ郡で、ナパ郡ではありません。ナパの特定の畑の下にある岩石を読み取ることは、ここで示した地域全体の見取り図とは別の作業です。
この記事に出てくる地形を、太平洋からシエラネバダまで、谷の気候や地形に対する役割とともに並べたものです。測定値はありません。
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| 位置 | 谷への働き | |
|---|---|---|
| マヤカマス山地 | 谷の西;北部海岸山脈の一部 | 冬の雨陰:太平洋の嵐は弱まって谷に届く |
| ヴァカ山地 | 谷の東 | セントラル・ヴァレーの熱から谷を守る |
| カリフォルニア海流 | 沿岸;冷たく、南へ流れる | その上に冷たく湿ったマリンレイヤーができ、内陸へ引き込まれて暖かい季節のほとんどの日に谷底へ霧が届く |
| セントラル・ヴァレー | ヴァカ山地の東;堆積物に埋められている | 内陸で暖まって上昇する空気が、冷たい太平洋の空気を引き込む |
| シエラネバダ | セントラル・ヴァレーの向こう | 傾いた断層地塊:東面は高く険しく、西斜面は緩やかに谷の堆積物の下へ消える |
| サンアンドレアス断層 | 海岸山脈とほぼ平行 | トランスフォーム境界:太平洋プレートが北米プレートに対して北へ動く |
グラスの中で二つを比べる
「谷底らしい」「山らしい」スタイルは決まりではなく、確かめるべき仮説として扱います。役に立つのは、同じ品種・同じ収穫年のワインを二本、たとえばカベルネ・ソーヴィニヨンを二本用意し、一本は谷底の畑、もう一本は斜面の畑と表示されたものを比べる練習です。
裏ラベルやテイスティングノートを読む前に、観察したことを書き留めます。色の濃さ、香りの強さと性格、酸、タンニンの量と質感、アルコール、余韻の長さです。そのうえで二つの記述を比べます。違いは畑から来ることもありますが、栽培の選択や醸造からも生まれるため、一組のワインだけで畑の影響を証明することはできません。
記述式演習 1:夏の霧と二つの山地
【設問】
夏に海霧がナパ・ヴァレーに届く仕組みを説明しなさい。あわせて、谷を挟む二つの山地の名前と、それぞれが気候に果たす役割を挙げなさい。
【模範解答】
沖合では冷たいカリフォルニア海流が南へ流れ、その上に冷たく湿ったマリンレイヤーができる。夏にはカリフォルニア内陸で上昇する熱い空気がこの冷たく湿った空気を内陸へ引き込み、暖かい時期の大半の日に海霧がナパ・ヴァレーに届く。西のマヤカマス山地は雨陰をつくって冬の太平洋の嵐を弱め、東のヴァカ山地はセントラル・ヴァレーの暑さから谷を守る。
【自己採点の目安(Maison 独自の目安で、公式試験の採点基準ではありません)】
・冷たいカリフォルニア海流と、その上にできるマリンレイヤー
・夏に内陸の熱い空気が太平洋の空気を引き込むこと
・霧は毎日ではなく、暖かい時期の大半の日に届くこと
・冬の雨陰としてのマヤカマス山地と、セントラル・ヴァレーの暑さを防ぐヴァカ山地
記述式演習 2:主張を確かめる
【設問】
あるワインリストが、ナパの斜面のワインを「霧の上で育った」と紹介している。この主張を確かめるには何を知る必要があるか。また、谷全体についての説明だけではなぜ確かめられないのかを述べなさい。
【模範解答】
畑の標高と、生育期にその地域で海霧がどの高さまで達するか(できれば数年分)を知る必要がある。この記事のような地域全体の説明は、霧ができる仕組みと届く頻度を示すが、一つの畑が霧に対してどの高さにあるかは示さない。地形図や地質図があれば畑の標高と下にある岩石はわかるが、霧についての主張には現地の気候観測が必要である。
【自己採点の目安(Maison 独自の目安で、公式試験の採点基準ではありません)】
・畑の標高が必要であること
・その地域と季節の霧の高さが必要であること
・谷全体の説明では一つの畑についての主張を確かめられない理由を述べていること
・位置と地質(地図)と、霧(気候観測)を分けていること
物理的な条件
- 沖合の冷たいカリフォルニア海流、西のマヤカマス山地と東のヴァカ山地
気候の応答
- 暖かい時期の大半の日に届く海霧、雨陰で弱まる冬の嵐、さえぎられるセントラル・ヴァレーの暑さ
グラスの中
- 結論を出す前に、同じ品種・同じ収穫年の谷底と斜面のワインを比べる
よくある質問
夏、なぜナパ・ヴァレーに霧が届くのですか?
カリフォルニア内陸で上昇する熱い空気が、冷たく湿った太平洋の空気を内陸へ引き込むためです。その空気は冷たいカリフォルニア海流の上にできるマリンレイヤーに由来し、こうしてできた海霧は暖かい時期の大半の日に谷に届きます。
マヤカマス山地とヴァカ山地は、谷の気候に何をしていますか?
西のマヤカマス山地は雨陰をつくり、冬に太平洋から来る嵐を弱めます。東のヴァカ山地はセントラル・ヴァレーの暑さから谷を守ります。二つの山地に挟まれた谷は、乾燥した地中海性気候です。
ナパの山の畑は霧の上にあるのですか?
個々の斜面の畑が霧の上にあるかどうかは、その畑の標高と、生育期にその地域で霧がどの高さまで達するかで決まります。知るには、公式の AVA の定義と現地の気候観測が手がかりになります。
情報源
- Napa Valley Vintners:ナパ・ヴァレーがワイン用ブドウの栽培に適する理由(気候・土壌・地形)
- NOAA JetStream:マリンレイヤー(海洋性の空気の層)
- NOAA JetStream:海洋の循環
- 米国立気象局(NOAA)用語集:雨陰
- 米国地質調査所(USGS)『This Dynamic Earth』:プレートの動きを理解する
- カリフォルニア地質調査所 Note 36:カリフォルニアの地形区
- 米国地質調査所(USGS):マヤカマス山地中部とガイザーズ地熱地帯の地質図(GIS データ、カリフォルニア州ソノマ郡・レイク郡・メンドシーノ郡)
- NOAA National Weather Service glossary: orographic
